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家出人③
あのお義父さんが…
“お義母さん命 ”の、あのお義父さんが浮気なんて…きっと誤解だ。
「お義母さん…」
「うえっ、うえっ…あのね、ひくっ…みんなが…えぐっ、帰った ひぐっ…後に…うぐっ…電話が…うえっ…」
しゃくりあげながらで随分時間が掛かったが、必死で言葉を紡ぐお義母さんの話を要約すると…
『家族が増えてうれしくって、みんなで楽しく食事もできて、かわいいお嫁ちゃん達とも話せて、その後、パパといい雰囲気になったところへ、一本の電話が掛かってきた。
偶々お義母さんの目の前にあった携帯の画面に“礼二”という文字が出てて、知らぬ名前で不審に思っていたが、その画面を見た瞬間、お義父さんが携帯を引っ手繰るように取り上げ、別室へ逃げるように出て行った。
怪しげな態度がバレバレのお義父さんに妙なカンが働いてそっと後をつけ、少し開いたドアから聞こえてきたのは
「…携帯に掛けてくるなって言ってるだろう?
かーちゃんにバレたらどうするんだ?
…あー、わかったよ。わかった。
また連絡するから。
…はいはい。じゃあな。」
瞬間『浮気』という単語が頭をよぎり、咄嗟に身の回りのものを詰め込んで、言い訳してくるお義父さんを無言で一発平手打ちしてから家を飛び出し、しばらく駅の近くをウロウロしていたが、いろんな人に声を掛けられ怖くなって、気が付いたらここに来ていた。』
ということだった。
《礼二って知ってる?》
《いや…知らないな…》
アイコンタクトで会話する継と俺。
お義母さんは、ずっと泣いている。
そっとティッシュを渡し、背中を摩ってお義母さんが落ち着くのを待っていた。
これが本当に浮気なら、絶対にお義父さんを許さないっ!
と、継の携帯に着信が!
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