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家出人⑦

「真澄…誤解するような態度で済まなかった。 隠そうとしたのが余計に悪かったんだな。 心配かけてごめんなさい。 でも、内緒にしてビックリさせてやりたかったんだよ…」 お義母さんはしくしく泣いている。 泣くのを必死で堪えようとして、時折しゃくり上げる声が漏れてくる。 お義父さんは、お義母さんの肩を抱いてぴたっとくっ付くと 「なぁ、もう泣かないでくれよ…な? ごめんな、ごめん、真澄…」 「ひぐっ、ごめんな…さいっ…ひくっ…叩いて…ごめんなさいっ」 「うん、痛かったぞ?帰ったら…手当てしてよ。」 お義母さんはすっぽりとお義父さんの腕の中に収まって、嗚咽も少しずつ小さくなってきた。 よかった、誤解で。 継を見たら、やれやれとでも言いたげに笑っている。 「親父…面倒臭いことするなよな。 取り敢えず、こっちは一件落着だな。 で?兄貴達は?」 「俺が悪かったんだ。右京の気持ちも考えてやらずに、俺の欲望だけで突っ走って… 右京、ごめんな。大事な時なのに。 わかってやれなくてごめん。 香川先生にも伊織さんにも叱られたよ。 大事にするから…戻ってきて… それとも…しばらく同居する?」 「俺こそごめん。ちょっとナーバスになっちゃって…自分の欲望しか考えない潤に腹が立って… お義父さん、お義母さん、しばらくお世話になってもいいですか?」 「もちろん!大歓迎だよ!ね、パパ!?」 「あぁ。大歓迎さ。今からでもいいからおいで。」 そっと労わるように右京さんを抱きしめるお義兄さんに、頬を染めた右京さんが身体を寄せる。 「こっちも落着だな。 あーぁー、夫婦喧嘩は犬も食わねーわ。 何かもう、腹減ったな…みんな飯まだだろ? 今日は俺が作ってやるよ。 みんなゆっくりしていって。」

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