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家出人⑧
キッチンへすたすたと行ってしまう継を慌てて追いかけた。
「継!待って!俺も一緒に!」
「詩音も座ってろ。俺が作るから。」
「…他人様 のあの甘い匂いを一人で嗅いでろとでも?」
「あははっ!そうだな…じゃあ、手伝ってくれ。」
「はいっ!」
ソファーでは二組のカップルがそれぞれの世界でイチャlove中。
邪魔はしたくないし、目の毒鼻の毒だ。
「でも、誤解でよかったです。」
「あぁ、そうだな。
誕生日に年の数のレアな深紅のバラなんて、ベタだけど親父らしいや。
あの聡いお袋に内緒にしようとするからこんなことになるんだって。
それにしてもお袋の大号泣初めて見たな。
兄貴も兄貴だよ、全く…
あーぁ、とんだ一日になっちまったな…詩音、すまない。
後で俺達もゆっくりと…」
「いや、あの、継?俺達はさっきまでゆっくりとしてましたからっ!
もう、十分ですっ!」
「何だって?確か…途中で邪魔が入ったんだったよな?
…二人っきりになったら…な?詩音…」
ぶわりと、継から俺を誘うフェロモンが舞い落ちる。
「ダメダメ、ダメですっ!
さ、ご飯の用意しましょ?
サンドイッチ用のパンもたくさん買っておいてよかったです!
みんなにお腹一杯食べてもらえる!」
俺はそそくさと継から離れ、いつも以上に手早く作り上げていった。
右京さんには たんぽぽティー、後のみんなにはアイスコーヒーを準備して、サンドイッチとスープを持って行った。
「うわぁ、美味しそう!詩音君、ありがとう!
みんな、早速いただこう!」
「あ、右京さんにはコーヒーの代わりにたんぽぽティーです。
妊夫に優しい飲み物だそうですよ。」
「うわぁ!ありがとう!うれしいな…お義父さん、お義母さん、いただきましょう!」
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