265 / 829
家出人⑨
さっきまでの悲壮な空気はどこへやら。
みんな和気藹々と朝食を楽しんでいる。
泣いたカラスのお義母さんはご機嫌で、お義父さんと食べさせ合いっこ。
「はい、パパ。あーん♡」
「うん、美味い!継、詩音君もなかなかの腕だな。
かーちゃんには まだちょっと負けてるけどな。
はっはっはっ」
「やだなぁ、パパったら。」
「ほら、右京。これ、美味いぞ。
赤ちゃんの分もしっかり食べて…」
「もう、潤…まだまだわかんないくらいに小っちゃいんだよ!
そんなに食べれないよ…」
「そんなこと言わないで…ね?ね?」
俺と継は目のやり場に困りながらも、片膝同士をくっ付けあって、くすくす笑いながら穏やかな時間を楽しんでいた。
「本当にお騒がせしてごめんなさいっ。
恥ずかしいとこ、一杯見せちゃった。」
ぺろっと舌を出して、えへへっと笑うお茶目なお義母さんの腰に腕をしっかりと絡めたお義父さんは
「朝早くから申し訳なかったな。
世話をかけてすまなかった。
詩音君、継と喧嘩したらどこにも行かずにすぐ家に来るんだよ。」
「継君、詩音君…俺達もお騒がせして申し訳ありませんでした。
心配かけてごめんなさい。
しばらく実家にお世話になるから、また遊びに来てよ。
…って、図々しく俺が言う台詞じゃないよね。
あははっ。」
「本当に親子共々世話になって申し訳ないっ。
詩音君、こんな麻生田家だけど、これからもよろしくね。」
ふわふわと甘くて優しい匂いがする中で、俺は
「いいえ、とにかく解決してよかったです!
また遊びに行かせて下さい!
それと
俺達が喧嘩したら、頼って行きますから泊めて下さいね。」
笑い声が飛び交いながら、大嵐が去って行った。
本日は晴天なり。
いい日になりそう…かな?
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!