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家出人その2②

「…と言う訳で、しばらく置いて下さい!」 今にも吹き出しそうな四人を目の前にして、タクシーで乗り付けた俺は頭を下げていた。 「ふふっ…遠慮しなくていいから。ねぇ、パパ。 ここでゆっくりするといいよ。 とは言うものの…あのヤキモチ焼きが黙って一人でいるとは思えないんだけどね。」 「俺達も人のこといえないからなぁ…まぁ、継が来ても締め出して家には入れないようにするか。 なぁ、かーちゃん。」 お義兄さんと右京さんは、にこにこ笑っている。 と、突然俺の携帯が鳴る。 「…継だ…」 「出なくていいの?」 とお義母さん。 「…はい、出ません。」 と、今度はお義母さんの携帯が。 「かーちゃん、出なくていいのか?」 「出ません!」 鳴り止んだと思ったら、次はお義父さんの。 「パパ、出ないの?」 「出てやらなーい。」 しばらく鳴り続いた後、お義兄さんの携帯が。 「うるせーなぁ…仕方ない、出てやるか。 みんな、聞いといてね。マイク、ON! …もしもーし。」 「…兄貴…詩音…詩音が、そっち行ってないか? 置き手紙残して、そっちに行くって…」 今にも泣きそうな心許ない声。 「知らねぇな。お前、詩音君に何したんだ? さっきあんなに余裕ぶっこいてたくせによぉ。」 「詩音にも、親父やお袋にも繋がらない… 詩音に何かあったら、俺、俺は…」 「…お前、泣いてんのか?」 「…………………」 「おい、泣くなよ、バカ。」 「…詩音は…拉致されて怖い目に遭ってるんだ… そのせいで… 今度詩音に何かあったら、俺、どうしていいのかわからない… 早く、早く見つけてやらないと…」 最後は絞り出すような小さな声… 継っ!!

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