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家出人その2③
継の声を聞きながら、俺はポロポロ涙を零していた。
継!継!継!
ごめんなさい。
何でもないことで腹を立てて、勝手に出て来ちゃってごめんなさい。
心配掛けてごめんなさい。
この前の誘拐事件のこと…その後の番拒否症候群のこと…ずっと心を痛めてたんだ…
ごめんなさいっ
ごめんなさいっ…
継…会いたい…
お義母さんが俺の隣に座ってきて、手を握り頭を撫でてくれる。
「もういいかな?お仕置き、十分だよね?」
俺はこくこくと黙って何度も頷いた。
「あ、継!お袋が来たから代わるぞ。」
お義母さんはお義兄さんから携帯を受け取ると
「はーい、継!さっきはありがとうね。
詩音君、今 家に着いたとこだよ。
無事だから安心しな。
…泣くなっ!……落ち着いたらこっちにおいで。
じゃあね。
ははっ!あの様子じゃすっ飛んで来るよ!
大号泣してた。
余程心配してたんだね。」
いつの間にか右京さんがそっと側に来てくれていて
「詩音君…さっきはありがとう。
君も番の継君にとっても愛されてるんだね。
仲直り…してね?」
うっ、うっ、うわぁーーーん
涙腺が崩壊した。
右京さんの手を握ってわんわん泣いた。
そんな俺の背中を優しく摩ってくれる右京さんからは、やはり優しい花の香りがしている。
一頻り泣いて涙も治まった頃、息急き切って継が飛び込んで来た。
「しおーーーーーんっ!」
磁石が引き合うように、継の胸に飛び込んでいった。
「うえっ、うえっ、けい、ごめんなさいっ」
「…俺も…ごめんな…兄貴のこと笑えないよ…
無事でよかった…お前に何かあったらどうしようかと…心配で、心配で…」
周りにみんながいるのも御構い無しでぎゅうぎゅう抱きしめ合う。
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