270 / 829

家出人その2⑤

お義父さんとお義母さんは用事で出掛けてしまい、俺達四人で…というか、お義兄さんと継とであれこれ話が進んでいた。 勝手に拒否して勝手に怒って家出して、挙句に継を泣かせるほど心配させて、みんなに笑われた… 俺、一体何やってんだろう。 あの継が号泣するなんて。 あの時のことが余程堪えているのだろう。 あれは見えない棘となって、継の心に刺さったままなのか。 継は二度と離さないとでも言いたげに俺をガッチリと抱き込んでいる。 みんなの前だけれど、それで継の心が安定するのなら…と敢えてされるがままになっている。 そりゃあ、何かとエッチに縺れ込ませようとする継が悪い。 あの性欲には、体力的についていけない時がある。 だから、できるだけセーブして…と思っているのだけれど、継には通じない。 「愛してるんだから求めて何が悪い?」 そう言われたら言い返せない。 そうだ!右京さんに相談しよう! さっきの右京さんとこの喧嘩の原因も『エッチに雪崩れ込もうとして拒否されて』っていってたから…お義兄さんも継と同じっぽいし。 「…けーい?」 「ん?どうした?詩音。何かほしいものあるのか?」 「ううん。違います。俺、ちょっと右京さんと二人で話したい。」 「このまま話せばいいじゃないか。」 「だって…“嫁同士”の話だから…聞かれたくない。」 「何だよ…俺が聞いたらマズイのか?」 途端に膨れっ面になる継。 あ…ヤバい… 「だって…妊娠や子育てのことだから…」 「何?妊娠?子供? 詩音、まさか俺達にも」 「違います!心構えですっ! もう…せっかちなんだから…」 「…わかった。すぐ戻ってくれよな、待ってるから。」 やっと離してくれた。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!