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家出人その2⑧

発情期のことやら、妊娠のこと、お互いのノロケ話にまで発展して盛り上がっていると トントン 遠慮がちなノックの音がした。 右京さんが答える。 「どーぞー」 そっと覗き込むような顔が、二つ。 継とお義兄さん! 「…話終わった?入っていいか?」 部屋の入り口で、お義兄さんが右京さんにお伺いを立てると 「えーっ…まだ話したいこと一杯あるのにぃ… ねぇ、詩音君。」 「はい!もっと話したいですっ!」 お義兄さんが頭を掻き掻き 「右京…俺、右京不足で限界なんだけど…いい加減補充させてよ…俺、泣いちゃうよ。」 「詩音!俺も…俺だって詩音不足で死にそうだよ。 ねぇ、お願い…ちょっとだけ抱っこさせて…」 大きな身体を丸めて懇願する二匹の大型犬。 どちらからも甘い匂いがしている。 右京さんと俺は顔を見合わせて吹き出すと 「詩音君、どうする?」 くすくす笑う右京さんから、甘い甘い匂いがする。 「ふふっ…仕方ないですね。 じゃあ、右京さん、今度またゆっくりお話し聞かせてくださいね。」 「もちろん!お義母さんにも頼んどくよ。」 それを聞いた二匹が部屋に飛び込んできて、それぞれの番に抱きついた。 俺を膝の上に乗せ、少し目を細めて優しい眼差しで見つめてくる継。 お二人が同じ部屋にしても気にせずに、継を見つめ返す俺。 いつもの甘い大好きな匂いがする。 胸元に擦り付いてすんすんとその匂いを嗅げば、嫌な感情も全て吹き飛んだ。 「詩音…あぁ、詩音….すぐに盛っちゃってごめんな… 愛してるから…止まらないんだよ…」 「少しは考えてくださいね。」 「反省する…でもぎゅうってさせて…」 隣でも… 「右京…寂しかったよぉ〜…イイコイイコしてくれよ…」 「はいはい。」 流石に兄弟。甘えん坊だ…

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