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家出人その2⑨

ラブラブなピンクのハートが飛び交う部屋でくっ付いていると、玄関がドタバタと賑やかしくなった。 「おーい、右京くーん、詩音くーん! ただいまぁー!」 「「お義母さんだっ!」」 右京さんと俺は、絡みつく番の腕をべりっと引き剥がし、彼らを放り出して、玄関へ向かった。 後に残ったのは両手を広げたままフリーズする大型犬二匹のみ。 「「お帰りなさーい!」」 「ただいまぁー!おっ、お嫁ちゃん達、スッキリした顔してるね。 何かいいことあった?」 俺達はお義母さんの荷物を受け取りながら、顔を見合わせて微笑むと元気よく返事をした。 「「はいっ!」」 「あっ、荷物ありがとう! それは良かった。ねぇ、パパ?」 「はいはい、そうだな。 ただいまぁ。おっ、お出迎えありがとう。」 大きな荷物を抱えながらお義父さんが後から入ってきた。 「「お義父さん、お帰りなさいっ!」」 「お昼もみんなで食べよう! 朝に続いてみんなで食べるご飯…うれしいな。 ん?潤と継…そんなブッサイクな顔して…どうしたの?」 振り返ると、お義兄さんと継が苦虫を潰したような顔をして立っていた。 継に至っては涙目である。 「ひどいよ、右京…俺よりお袋か…チッ…」 「詩音…お袋の方がいいのか?」 そんな二人を見て、お義母さんは大笑い。 「ばっかだねぇー。何 俺にヤキモチ焼いてんのさ。 俺は別格!嫁にとって姑は特別なの! ほらほら、ヤキモチ焼いて拗ねてないで。 パパの荷物、持ってあげて!」 二人は ぶつぶつ文句を言いながらも、お義父さんの両手一杯の荷物をキッチンへ運んでいった。 途中、右京さんが、拗ねるお義兄さんの耳元で何かささやくと、途端に破顔したお義兄さんは、右京さんの頭にキスをした。

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