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獣達の密談②

「継、何言ってんだよ! お前だってそうなったら我慢できるのか? 俺の子供を宿した番が、今まで以上に愛らしくって色っぽくって…そんなのが側にいたら、お前、ムラムラしないのか?」 「…あー…そうなったら、俺…自信ないわー… 今でさえも無理だもん。」 「だろ?だろ?俺がそうなるの、わかってくれる? …でもさ、お袋や伊織さんに懇々と諭されてさ…それ聞いてるうちに、俺が気持ち的に大人にならなきゃ…って。 病気じゃないけど、命を育むって、本当に大切で大変なことなんだって。 右京の体調や不安な気持ち、子供のこと考えたらさ、俺のそんな欲望なんて、ゴミ屑みたいなもんなんだよね… だからさ、俺の右京が安心して出産できるように、俺も頑張ることにしたんだわ。」 「へえっ…ヤることしか頭にない性欲の権化みたいな兄貴が、そんな考えになるのか…」 「『性欲の権化』って何だよっ! その台詞、そっくりそのままお前に返すわ! 継…お前も、詩音君が妊娠したらわかるよ。 守るものが増えると、男は強くなるんだぜ。 それに…香川先生が、妊夫に負担のかからないやり方教えてくれるって♡」 「…何だよ…やっぱり権化じゃんか。」 「…詩音君がそうなっても、お前には絶対に教えてやらないからな…」 「ごめん、ごめん、兄貴っ! 謝るから、許してっ!」 「ふんっ…お前だって立派な権化じゃんか。 仕方ないな…そうなったら教えてやるよ。 ところでさ、お前んちはどうなの?」 「…いろいろあったから…本当に。 最初、俺絡みで暴漢に襲われてさ。 これは秘書の篠山さんが守ってくれて、大事には至らなかった。 その後、例の事件…」 「あぁ、あれな…」

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