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落ち込み④

えっ!?延期!? 思いもよらなかった継の言葉に、潤んだ目を大きく見開いた。 「ごめん。俺の勝手な思い込みだったんだな… お前にそんなに辛い顔をさせてまで、しなくてもいい… 詩音、そんなに嫌だったのか…気付いてやれなくて…ごめんな。」 継は、フリーズする俺をそっと抱きしめると、頭を撫でて 「そろそろ寝ようか。」 と手を繋いでベッドへ連れて行った。 延期…延期…延期?? お父さんに何て言うの? お母さん、また泣いちゃうよ… 姉さんと昇さん。兄さんと義弘さん。 俺達のこと、ものすごく喜んで応援してくれて…義弘さんなんて一緒に泣くほど祝福してくれたのに… お義父さん…あんなに喜んでくれてたのに。 大好きなお義母さんに嫌われる!? お義兄さんだって… 右京さん、大事な時期に無理して来てくれようとしてるのに… え…俺、俺、心から喜んでくれてる人達に対して、何て言えばいいの? どうすればいいの? 俺の訳の分からないワガママのせいで、大切な継や、みんなに嫌な思いをさせてしまう! 寝室へ向かう足が止まった。 「…詩音?どうした?」 小刻みに身体が震え、言葉にならない。 すん…ぐすっ…うえっ、うぐっ…うえっ… しゃくりあげる声がだんだん大きくなる。 ダメだ、止まらない。 はあっとため息をついた継は、俺を姫抱きにすると、ベッドまで運んで、そっと下ろした。 その頃にはもう、わんわん大泣きしていた俺は、両手で顔を覆い、ひたすら泣き続けていた。 泣き止まない俺の隣に腰を下ろした継からは、困惑しきった匂いが流れてくる。 俺だって、俺だってどうしていいかわからないんだ! どうしてこんな気持ちになってるのかも、わからない。

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