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落ち込み⑧

慌ててバスローブを引っ掴んで羽織ると、継の後を追った。 バタバタと大きな音を立てて追いかけてきた俺を継が不思議そうに見つめる。 「詩音、どうした? ベッドじゃ嫌だったのか?」 思いっ切り首を横に振って、違うんだと言いたいけれど、口がぱくぱくと動くだけで、言葉が出てこない。 その代わりに、止めどなく溢れる涙で視界がボヤけてきた。 「詩音?…おいで…」 腕を大きく広げられ、吸い寄せられるようにその胸に飛び込んだ。 すんすんと胸の匂いを嗅いで、あぁ、いつもと同じだ と安心した。 その中に戸惑いの匂いが混ざっているけれども。 匂いを嗅ぎながら、えぐえぐと泣く俺を継は黙って抱きしめ頭を撫でてくれていた。 「ぐっ…違うっ…違うの…ひぃっく…違うの… ごめん…なさいっ…ひぐっ…ごめんなさいっ」 やっと、ごめんなさいって言えた… 後はひたすら泣いた。 継は根気よく俺が紡ぐ言葉を待っていてくれた。 こんな、こんな泣き虫で情緒不安定な伴侶でごめんなさい。 ワガママばっかり言って振り回してごめんなさい。 いつも俺のことを…俺の家族のことまで考えてくれてるのに、受け入れなくてごめんなさい。 ……… たくさんの『ごめんなさい』を心の中で繰り返しながら、泣き続けた。 しゃくりあげる回数が減ってきて、涙も治まってきた。 「気が済むまで泣いたか? もう『ごめんなさい』は言わなくてもいいぞ。」 顔を覗き込まれ、頬を伝う涙の跡を親指で拭われた俺は、その言葉にびっくりした。 「…何で?どうしてわかったの?」 「お前のことなら何でもわかるんだぞ。 番を舐めるな。」 さもおかしい という風に継が笑っていた。

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