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落ち込みside:継③
詩音がドアの前に立っていた。
「おわっ!びっくりした…詩音、どうしたんだ?
ほら、こっちにおいで。」
胸元に抱き込んで、頭にキスを落とした。
詩音は俺の腕の中で、えぐえぐと泣きながら
「…っく…わかんない…どうしていいのか…ひっく…わかんない…」
「よしよし。いい子だ、詩音。
そうだ、暖かいものでも飲もう。」
手を引いてソファーに座らせた。
そうだ、ホットミルクがいいな。
急いで温めて、たっぷりの蜂蜜を入れたマグカップをトレイに乗せて詩音の元へ。
熱いから火傷をしないようにと注意して、カップを手に持たせてやると、詩音は、ふーふーしながら一口飲んだ。
うっ、かわいい…萌える…
様子を伺っていると、ポロリと一筋涙が流れた。
慌ててそれを拭ってやると、潤んだ目で見つめてくる。
何をそんなに憂えているんだ?
何がそんなに悲しいんだ?
俺の愛…まだ足りてないのか?
「慌てなくていいから、ゆっくり飲みなさい。
ほら、ふーふーして。」
俺の言うことに素直に従って、冷ましながらゆっくりと飲み終えた詩音から、カップを受け取り片付けると、姫抱きにしてベッドへと運んだ。
「何も手を出さないから抱き合って寝よう。」
とささやいて、詩音がぼぉっとしている間に服を脱がせ抱きしめた。
心を込めて優しく優しく頭を撫で、身体を摩り、顔中にキスの雨を降らせ、時折ぴくりと震える様も俺の欲を駆り立てたが、滅茶苦茶『忍』の一文字で耐え忍び、何とか凌いだ。
うっとりと目を閉じ、意識を手放そうとする詩音の耳元でささやいた。
「どんなお前でも愛しているよ。」
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