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落ち込みside:継④
甘く切ない匂いで目が覚めた。
俺の愛しい伴侶の頬には、乾いた涙の跡が残っていた。
また泣きながら眠ってしまったのか。
詩音を起こさないようにそっと身を起こし、ベッドの縁に腰を掛けた。
傷付いた詩音の心をどうしたら癒してやれるんだろう。
伊織さんは『本当はちゃんと理解してるんだよ』って言ってたな。
昨日俺が伝えたことも、わかってるんだ。
番拒否症候群って、マジ厄介な病気なんだな。
特に詩音のような繊細な心の持ち主には、天敵みたいなもんか。
この間みたいにたっぷりと愛してやらないとダメだってことか?
あれこれ考えていると
「…継?」
お姫様のお目覚めか。
その声に振り向いて布団ごと抱きしめた。
戸惑いや悲しみの匂いの中に、やはり甘い匂いが混じっている。
俺を完全に拒否してるのではないと確信した。
「おはよう、詩音。よく眠れたか?」
ちゅっとキスをして、朝食の準備をするからと言い残し部屋を出た。
手早く支度をして詩音を迎えに行く。
「詩音、ご飯できたから食べるぞー!
起きておいでー!」
もう一度叫びながら詩音の側へ。
肩を抱いて起こそうとする俺の手を拒絶した。
あぁ、詩音…また俺を拒否するのか…?
仕方がない…
「…そうか…一緒に食べるのも辛いのか…
…ん、わかった。詩音の分ここに持ってくるから待ってて。」
うーん…これからどうしよう…
ベッドに持って行って、嫌がらなければ抱っこして食べさせるか…
こうなったら徹底的に甘やかさねばならないが…この間とはまた少し様子が違うようだし…
あれこれ考えながら準備をしていると、目の前に詩音が目に涙を一杯溜めて立っていた。
「詩音、どうした?
ベッドじゃ嫌だったのか?」
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