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落ち込みside:継⑥
また泣かせてしまったか…
抱きしめたり離れたりオロオロとそれを繰り返す。
あぁ、どうして俺はいつもこうなんだ。
詩音はふるふると首を振って『どうしたらいいのかわからない』と言う。
それでも、俺の気持ちもわかってくれていた!
みんなに祝福してほしいとも思っていた。
なのに、自分の頭がおかしくなったかもと、また泣く。
『多分それ…マリッジブルー。』
その言葉にきょとんとした顔をしていた。
やはり自覚がなかったのか。
俺の嫁は、しっかり者で繊細で聡いのだが、純というのか、箱入り息子で育てられてきたせいなのか、割と幼いところがある。
Ωなら雑学として知っているであろうことも、「ハテナ」のこともある。
だから余計に目まぐるしく変わる環境と心の変化に戸惑い、元々繊細な心を痛めてしまうのだろう。
絶対に俺が守ってやらなければ。
そんなことを考えていると
「継…」
甘い匂いとともに、詩音がぽすんと俺の胸に頭をくっ付けてきた。
そして、おでこをぐりぐりと擦り付けて、両手を背中に巻き付けると、力一杯抱きしめてきた。
詩音が俺を抱きしめている!
「詩音…」
優しく名前を呼び、顎を持ち上げてキス。
ちゅっ と音を立てて離れていった唇を追って、詩音から唇を重ねてきた!
はむはむと上から下へ、俺の唇を食んでいく。
俺は驚いたが思わず笑みが溢れ、詩音のなすがままになっていた。
拙い動きと切なく甘い匂いが、必死な詩音の思いを伝えてくる。
詩音が最後にペロリと舐めて、そっと離れていくから
「それでおしまいか?」
と意地悪く言ってやった。
詩音は瞬間ぼふっと赤くなって俺の腕からすり抜けると
「もう、いいです!」
と叫んで洗面所に逃げ込んでしまった。
あーぁ、またやっちまったか。
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