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落ち込みside:継⑦

詩音から仕掛けてくれるなんて…うれしい! 胸がきゅうっと…萌えた… 番拒否症候群ではなくて、普通のマリッジブルーなのか。 少しホッとした。 あんなに一生懸命に俺を求めて…くうっ、詩音、かわいいっ! 頭を持ち上げかけた俺自身を感じ、身悶えしながらもキッチンへ移動して、詩音が出てくる前に仕上げてしまおうと急いで支度をした。 やっと出てきた詩音は少し拗ねている。 さっき揶揄ったせいだな。 「お腹が空いて倒れそうだ。 詩音、おいで。」 膝の上に抱き込んで食べさせてやる。 …抵抗しないぞ。 ふっ…餌付けに成功したか。 素直に口を開け食べる様は小動物みたいで愛くるしい。 動画で撮りたいのだが、そんなことをしたらヘソを曲げるに決まっている…残念だ… 二人とも満足するまで平らげて、片付けるために一旦詩音を椅子に座らせた。 詩音の視線が俺の後を追ってくる。 ふふっ。どこにも行かないから安心しろよ。 片付けてるだけじゃないか。 何を怖がってるんだ? ん? 違う…怖いんじゃない。 詩音からふわふわと流れてくるこの匂いは… 『ハヤク キテ』 『ギュッテ シテ』 『タクサン キスシテ』 うおぉぉぉーーーっっ 悶えすぎて食器を落としそうになった。 詩音が、詩音が…俺を誘っているーーっ!!! さっきから俺を追っていた視線は、俺を一目でも見逃すまいとしていたのか? 無自覚に溢れ出るフェロモンは、Ωがαを誘う求愛の匂いだ。 ヤバい ヤバい それに煽られて俺からも…濃く甘い求愛のフェロモンがたっぷりと出ている。 詩音の頬が朱に染まった。 俺の匂いをキャッチしたな。 二人の間に流れる微妙な攻防戦。 仕掛けるのは俺か?詩音か?

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