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落ち込みside:継⑨
抱き潰す前に、詩音の気持ちをちゃんと確認して、予定通り結婚式を執り行うことになった。
『詩音の心配事は全て拭い去ってやる。』
そう言って抱きしめると、また詩音は泣いた。
俺の嫁は泣き虫だから。
そこがまたかわいいんだけど。
翌日…仕事の合間を縫って、伊織さんにお礼の電話をした。
「伊織さん…ありがとうございました!
詩音、自分が『マリッジブルー』だとわかって、気持ちの整理がついて、結婚式…大丈夫になりましたっ!」
「そう、それはよかった!
継君、詩音君のこと、しっかりと愛してあげてね。
君の愛だけが詩音君の生きる糧だから。」
「はいっ!
詩音は繊細過ぎて、何でも自分で抱え込んでしまうので…俺が嫌という程愛してやりますよ。」
「うわぁ…ご馳走様。聞いてるこっちがムズムズするよぉ。
言うんじゃなかった…
そうそう。落ち着いたら、うちに遊びに来るように詩音君に伝えてよ。ゆっくり話したいしさ。」
「はい!ありがとうございます。
詩音にもそのように伝えます。ぜひお邪魔させていただきます。
香川先生にもどうぞよろしくお伝え下さい。」
「わかりました。伝えますね。
じゃあ、くれぐれも詩音君のこと、よろしくね。」
「はい!では失礼致します。」
はぁっ…詩音には一体何人の保護者が付いてるんだろう。
みんなにかわいがられて愛されて…
いや、愛するのは俺だけでいいっ!
トントン
ノックの音とふわりと香る番の匂い…あっ、詩音だ!
もう、そんな時間か…
「はい、どうぞ。」
ひょこっと顔を出した詩音は相変わらず初々しい。
俺の顔を見た途端にふにゃりと和らいだ詩音。
ダッシュで近付いて抱きしめた。
あぁ…詩音…
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