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矛盾する想い⑥
思い耽る継と家に戻り、夕飯の用意に取り掛かった。
継は
「ちょっと調べ物があるから、悪いけど支度ができたら呼んでくれないか?」
と言い残し、書斎に篭ってしまった。
さっきから様子が変だった。
『俺がもっとしっかりしなくちゃいけないんだよな…』
って何か思い込んでいたようだった。
どうしたんだろう。
でも、仕事のことなら俺が口を出すことはできない。
俺ができることは…継がゆっくりと心身ともに安らげる場所を作ること…
気合いを入れ直してお風呂のお湯を張り、食事の支度をした。
トントン
「継?お待たせしてごめんなさい。ご飯ができました。」
「…ああ、詩音…ありがとう。今行くよ。」
疲れた顔。いつもは見せない…顔。
それでも継からはいつもの匂いがする。
よかった…
たわい無い話をしながら、箸を進める。
食欲は…いつもと変わりない。
うん、大丈夫。
片付けてる間にお風呂に入ってもらう。
いつもなら一緒に入りたがるのに、今日はすんなりと一人でバスルームへ行ってしまった。
あれ?
何だか…物足りない?
いや、そんなことはない。俺だって偶にはゆっくりと一人で入りたいもの。
継が出てきた。
俺の頭を撫でて、一人で寝室へ入って行った。
あれ?
いつもは…ここでハグしてキスして、ちょっといちゃいちゃして…
ん?あれ?
どうしたんだろ…何もしてこない…
期待してた俺が恥ずかしい。
俺も入ってこよーっと。
湯船に浸かりながら、考える。
今日の継はやっぱり変だ。
篠山さんがいなくて忙し過ぎたのかな…
うん、きっとそうだ。
さっさと上がって着替えると、継の元へ飛んで行った。
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