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矛盾する想い⑧
嗅いでいるうちに、次第に体が熱を帯びてきた。
…忘れていた欲が昂ぶってきた。
ずくん と先端がむず痒く反応して、自分でも無意識に右手がそれを掴んでいる。
「あっ…」
今まで殆ど自分で自分を慰めたことはなかった。
与えられてた快楽は継からだけだった。
ゆっくりと手を上下に動かしてみた。
びりびりと、そこから電気が走ったようにお腹から背中へ抜けた。
「ンっ…」
甘い吐息とともに、ぶわりと噴き出すフェロモン。
一度動き始めた手は止まらなくなった。
継がしてくれるように、それを思い出してひたすら手を動かす。
零れ落ちる先走りが潤滑油となり、ますます滑りが良くなり、快感が増してくる。
「はぁっ…継…継っ…」
先端の穴を抉り、更なる快感を追い求める。
獣のように。
継の名を呼び、身体の内側から高まる快楽に身を任せ、吐き出すタイミングを計っていた。
子宮はきゅうきゅうと収縮し、イけそうなのに、イけない…
足りない…足りない…
身体を犯す継の剛直な楔のあの熱さと重量感が…本物の継が…足りない…
「…継っ、継が…ほしいよっ…」
口から溢れた心の叫び…
吐き出した言葉は濁流となって、溢れ出して止まらない。
「…あっ、継っ…ぐすっ…継……」
切なさで涙まで出てきた。
継の顔を
声を
匂いを
肌の熱さを
灼熱の楔の感触を
継の全てを思い出して、無理矢理に絶頂へ導く。
あと少し、あと少し…
くんくんと布団の匂いを嗅いで…
「ああっ!」
どくっ と吐き出された白濁の液体。
粘つくそれは愛の証か。
肩で息をして、蹲ったまま呼吸を整える。
よろよろと起き上がり、ティッシュで拭き取ると、一目散にバスルームへ駆け込んだ。
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