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矛盾する想い⑨
頭から熱いお湯に打たれながら、ぐるぐる思考が回っている。
自分で…継のことを考えながらしちゃった…
いつも構われると『嫌だ』『ダメ』とか言うくせに。
俺にも押さえきれない性欲ってあったんだ…
これって…おかしい?
こんないやらしい俺を継は嫌いにならないだろうか…
いや、健全な男子なら当たり前のこと…
だって、俺は継を愛してるから。
とにかく汗と吐き出したモノを綺麗に洗い流して、身支度を整えバスルームを出た。
寝室のドアを開けた途端に、俺のフェロモンの匂いが纏わり付いた。
慌てて窓を開けて換気する。
その間にシーツも布団カバーも新しいものに替えて、洗濯機に放り込んだ。
ベッドメイクを終えて布団に包まったが、継の匂いがなくなっていた…
「…継…継…」
ポロリと零れた涙がシーツに染みを作っていく。
「呼んだか?」
飛び上がるほど驚いて、布団から顔を出すと…
愛おしい夫が甘い匂いを振り撒いて、そこにいた。
「…泣くほど…俺がほしいのか?詩音…」
ぎしりと音を立ててベッドに乗り上げてきた夫は、身体中からフェロモンを撒き散らしている。
布団を勢いよく捲り上げ、俺をきつく抱きしめると
「一人にしてすまない…焦ってたんだ。
篠山さんがいない一日、段取りが悪くて仕事が進まなくて…俺はいかにあの人に頼り過ぎてたのかが、よくわかった。
篠山さんの負担になってないと、勝手に自負して自惚れてた。
俺は社長としてまだまだ…井の中の蛙だった。
必死で学んで追いつかないとダメだと思ったんだ。
でも、そんなことは付け焼き刃的なことでは身に付くはずはないんだ。
挙句に大切なお前に寂しい思いをさせてしまった。
情けない夫でごめん。
ごめんな、詩音…」
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