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矛盾する想い⑩

俺はただうっとりと継の匂いに包まれて、話を聞いていた。 継が焦る?絶対的αの継が!? そんな継の気持ちも汲み取らずに俺は…俺は… 「ごめんなさい。そんな継の気持ちも知らずに…嫁として俺は失格でした…」 「何を言うんだ? 詩音は仕事もできるし、周りのことに気配りをしてみんなに頼りにされてるじゃないか。 中田からも聞いてるぞ。 自分をもっと素直に認めろよ。 それに…愛する嫁にこんなに思われて、男冥利に尽きるよ。 お前が自分の欲望に素直になってくれたこと…俺はうれしくって堪らない。」 え?…まさか、まさか…見てた? ぼふっと音がするくらいに真っ赤になった俺は、慌てて継から離れようとしたが、キツく抱きしめられてそれも叶わない。 「詩音…俺は本当にうれしい。 心から結ばれてるのは間違いないと信じているが、俺ばかりがお前を求めてるのかと…俺ばかりがお前を愛したいのかと…不安だったんだ。 詩音は俺が初めてで、俺から与えられる快楽が全てで…それが嫌なのかと思ってた。 それに自己否定MAXでツンデレで感情表現も下手くそだしな。」 喉を鳴らして継が笑う。 「俺達は夫夫だ。 二人だけにしか見せれないものがある。二人だけにしか感じ合えないものがある。 それは恥ずかしいことじゃない。 俺はどんな詩音も見たい。普段のお前もいじける詩音も好きだぞ。 でも、自分を誇りに思っていいんだ。 この間から思い悩んでいたようだが…詩音は詩音だ。 お前は最高の嫁だよ! 俺に委ねて全部見せろ。」 やだ…さっきの一人エッチだけでなくて、いろいろ思ってたこと、全部知ってたんだ。 あー…継には敵わない。 もう…悩んでたことがどうでもよくなった。 すりすりと顔を擦り付けてマーキングする。 継からも、それ以上に擦り寄せられてマーキングされた。

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