321 / 829
嫁の自覚①
すっかり目が冴えてしまった。
いろんなことが頭をぐるぐる回っている。
さっき早朝から自分の欲を処理したというのに、継に抱きしめられてまたその昂りを感じていた。
継をほしがる自分に戸惑っている。
心がほしい。
身体が…ほしい。
もう『十分過ぎるほど愛されてる』ってわかっているのに。
なおも求める俺は欲張りなんだろうか。
継からは、甘く優しい匂いと、俺を抱こうかどうしようかと迷う匂いがする。
身体に当たる継の股間の熱さも感じている。
強張りはますます固くなり熱いというのに。
俺も男だから…そんな状態が辛いのはわかってる。
いつもなら有無を言わさず襲ってくるのに、きっと…俺の気持ちを考えてくれてるんだと思う。
俺がいつまでたってもうじうじと、自分を否定しては思い悩み、継を愛する気持ちすら閉じ込めてしまおうとしてたこと…
それすらも否定せず、俺を丸ごと包み込んでくれる…
さっきだって、今までだって、出会ってからずっと、継は自分の気持ちをストレートに俺に教えてくれてた。
恥ずかしがらずに。
俺はそれに甘んじて受け入れるばかりで…
自分の気持ちを素直に伝えようとしていなかった。
継は…どんな俺も好きだと言ってくれた。
いじける俺も。
普段の俺も。
乱れる俺も。
俺がやってることも認めてくれていた。
継だけではなく、中田部長も。
もっと…もっと素直に自分の気持ちを表現しても…いいんだ。
もっと…自分が思うこと、やってることに自信を持っていいんだ!
こっとりと継の胸に顔を寄せる。
どくどくと生きている音がする。
規則正しいその音がいつもより早く感じるのは気のせいだろうか。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!