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嫁の自覚①

すっかり目が冴えてしまった。 いろんなことが頭をぐるぐる回っている。 さっき早朝から自分の欲を処理したというのに、継に抱きしめられてまたその昂りを感じていた。 継をほしがる自分に戸惑っている。 心がほしい。 身体が…ほしい。 もう『十分過ぎるほど愛されてる』ってわかっているのに。 なおも求める俺は欲張りなんだろうか。 継からは、甘く優しい匂いと、俺を抱こうかどうしようかと迷う匂いがする。 身体に当たる継の股間の熱さも感じている。 強張りはますます固くなり熱いというのに。 俺も男だから…そんな状態が辛いのはわかってる。 いつもなら有無を言わさず襲ってくるのに、きっと…俺の気持ちを考えてくれてるんだと思う。 俺がいつまでたってもうじうじと、自分を否定しては思い悩み、継を愛する気持ちすら閉じ込めてしまおうとしてたこと… それすらも否定せず、俺を丸ごと包み込んでくれる… さっきだって、今までだって、出会ってからずっと、継は自分の気持ちをストレートに俺に教えてくれてた。 恥ずかしがらずに。 俺はそれに甘んじて受け入れるばかりで… 自分の気持ちを素直に伝えようとしていなかった。 継は…どんな俺も好きだと言ってくれた。 いじける俺も。 普段の俺も。 乱れる俺も。 俺がやってることも認めてくれていた。 継だけではなく、中田部長も。 もっと…もっと素直に自分の気持ちを表現しても…いいんだ。 もっと…自分が思うこと、やってることに自信を持っていいんだ! こっとりと継の胸に顔を寄せる。 どくどくと生きている音がする。 規則正しいその音がいつもより早く感じるのは気のせいだろうか。

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