322 / 829
嫁の自覚②
継が頭をゆっくりと撫でてくれる。
「なぁ、詩音…俺はお前を一生守るって言ったよな?」
「…はい。」
「でもさ、それ、違うんだよ。」
えっ!?違う?
その言葉にびくっと身体が跳ねた。
「あ、ごめん、ごめん…言い方がマズかったな…守るのは絶対に間違いないんだけど、根本的なことが違うんだよ。」
?????根本的なこと?????
「…あのな、守ってくれてるのは、詩音、お前なんだよ。」
?????守るのは俺?????
ますますわからない。
「継…どういう意味ですか?」
「俺がお前を守るんじゃなくて、俺を守ってくれてるのは、詩音、お前なんだよ。
俺が守られてたんだ。
偉そうに俺が守ってるつもりだったのに、実際に守られてたのは俺だった ってこと。」
「…俺が、継を…守る?」
「うん。
お前は一見、線が細くて庇護欲の塊みたいに弱々しく見える。
番の俺が守ってやらなければ生きていけない。
そう思ってた。
でも…
一緒に暮らし、肌を重ね、喧嘩もして…同じ時を過ごすうちに、そうじゃないことがわかってきた。
見た目に反して、言い出したら聞かない頑固なところもあるし、じゃじゃ馬な面もある。
すぐに自己否定して落ち込んで泣いてしまう。
それも俺にとってはかわいいだけだ。
料理が上手で、うちのことも完璧にこなしてしまう。
誰に対しても優しくて心配りができる。
中田部長や社内の面々から大絶賛だぞ。
親父やお袋達なんて、俺を差し置いてお前にメロメロなんだからな。
しっかり者で俺が間違ってる時はちゃんと意見してくれる。
これは誰にもできない。お前だけだ。」
継の言葉がじわりじわりと沁みてくる…
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!