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嫁の自覚②

継が頭をゆっくりと撫でてくれる。 「なぁ、詩音…俺はお前を一生守るって言ったよな?」 「…はい。」 「でもさ、それ、違うんだよ。」 えっ!?違う? その言葉にびくっと身体が跳ねた。 「あ、ごめん、ごめん…言い方がマズかったな…守るのは絶対に間違いないんだけど、根本的なことが違うんだよ。」 ?????根本的なこと????? 「…あのな、守ってくれてるのは、詩音、お前なんだよ。」 ?????守るのは俺????? ますますわからない。 「継…どういう意味ですか?」 「俺がお前を守るんじゃなくて、俺を守ってくれてるのは、詩音、お前なんだよ。 俺が守られてたんだ。 偉そうに俺が守ってるつもりだったのに、実際に守られてたのは俺だった ってこと。」 「…俺が、継を…守る?」 「うん。 お前は一見、線が細くて庇護欲の塊みたいに弱々しく見える。 番の俺が守ってやらなければ生きていけない。 そう思ってた。 でも… 一緒に暮らし、肌を重ね、喧嘩もして…同じ時を過ごすうちに、そうじゃないことがわかってきた。 見た目に反して、言い出したら聞かない頑固なところもあるし、じゃじゃ馬な面もある。 すぐに自己否定して落ち込んで泣いてしまう。 それも俺にとってはかわいいだけだ。 料理が上手で、うちのことも完璧にこなしてしまう。 誰に対しても優しくて心配りができる。 中田部長や社内の面々から大絶賛だぞ。 親父やお袋達なんて、俺を差し置いてお前にメロメロなんだからな。 しっかり者で俺が間違ってる時はちゃんと意見してくれる。 これは誰にもできない。お前だけだ。」 継の言葉がじわりじわりと沁みてくる…

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