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嫁の自覚③
継は、俺の頭を撫でながら続ける。
「俺のことをいつも考えて、体調管理にも気を使ってくれてるだろ?
篠山さんに、こっそりと俺のその日一日の様子を聞いて、色々気を配ってくれてるよな。
俺がピリピリしてる時は、いつも以上に癒そうとしてくれて…
いつも一生懸命に俺のことを思って動いてくれてる。
…全部知ってるんだぜ。
篠山さん『うちの嫁も完璧ですが、詩音様はそれ以上ですね』なんて言ってる。すっかりお前のファンだよ。
だから、俺の都合がつかない帰宅時は、奥さん共々喜んで協力してくれるんだ。
『社長の嫁だから』じゃなくて『詩音だから』手助けをしてくれる。」
え…篠山さんに聞いてたの知ってたんだ…
俺は継の告白をドキドキしながら聞いていた。
そのうちに、胸の奥がきゅうっとなって、じわりと涙が滲んできた。
「毎日抱いても初々しくて…そのくせ妖艶に俺を翻弄してしまう。
俺達二人でしかできないこと…ちょっと口には出せないが…いろんな愛し方をしたい。
お前は嫌がるかもしれないがな…ふふっ。
αを活かし輝かせるのはΩ。
Ωのための存在のα。
俺を生かすも殺すも、詩音、お前次第なんだ。
俺が輝けるのはお前が守り支えてくれるからだ。
俺は、お前のための存在なんだよ。」
熱い…熱い継の言霊で、俺の小さな…こだわりというのか、燻っていたもの…自分を縛っていたものが、切れたような気がした。
Ωであることから始まった自己否定の鎖が、愛する番の継の愛によって…ぶつりと…断ち切られた。
溢れる涙は継の胸を濡らしてしまう。
継は俺の涙をそっと拭い
「また泣いてる。泣き虫。」
と笑った。
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