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嫁の自覚⑥
入口をぬるぬると切っ先で嬲られ、それだけでぞわぞわと脳天まで電流が身体を駆け抜ける。
ひくひくと開閉を繰り返すそこは、愛液を流し継の楔を受け入れる準備が既に整っていた。
「あぁっ…継…焦らさないでぇ…お願いっ」
泣き声で哀願する俺に、継はその固い楔を何度も擦り付けて
「ん?焦らしてないぞ。慣らしてるだけだ。
…詩音、どうしてほしい?言ってごらん?」
言葉責め…
継はどうしても俺に言わせたいらしい…あ の 単 語 を。
「詩音?ほら…何をお願いしたいんだ?」
体内に燻る熱。
段々と蓄積してくるその熱は、もう限界に達しそうだった。
やっとの思いで小さな声でささやく…
「…お願い…挿れて…」
「ん?何をだ?ちゃんと言ってごらん。
ほら、言えるだろ?」
ぶちっ
頭にきた…しつこい。意地悪。継は意地悪だ。
今日はもう許さない。
「ぐすっ…継の意地悪。ばかっ!俺一人で寝ますっ。」
本気で泣き出した俺に、継が慌てふためいた。
「わっ、悪かった!ごめん、ごめん詩音!
素直なお前がうれしくって、ちょっと意地悪したかったんだ。」
ふえっ、うぐっ…うぐっ
おろおろと俺を宥めすかす継の言葉を無視した。
素直になれと言ったのは継だ。
今日はなぜか腹が立ってならない。
愛し合いたい…その熱が冷めていく。
うえっ…うぐっ…うぐっ
継は俺の頭を撫でたり抱きしめたり、『愛してる』とか『揶揄って悪かった』とか言っているけど。
知らない!もう継なんか知らないっ。
隙をついて、しゅるりとその腕から逃れると、一目散に洗面所へ駆け込み鍵を掛けた。
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