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夫の自覚⑤
戸惑い遠慮する詩音をバスルームへ押し込めて、一口つまみ食いをして晩ご飯のセットと流しの片付けを済ませ、ワクワクしながら詩音を待った。
やっぱり詩音の作るものは美味い!
早く腹を満たして、それから…
ほんのりとボディソープのいい匂いを纏わせて詩音が現れた。
それだけで勃ち上がりかけた俺自身を気取られないようにそっと隠して、食卓についた。
お代わりをする俺を詩音はうれしそうに見つめているが、相変わらず『ゴメンナサイ』という匂いは消えなかった。
満足して手早く片付けると、冷やしてあったワインを準備する。
ほろ酔いでじわりと潤んだ瞳の詩音も堪らないな…などと邪な気持ちがムクムク育ってくる。
元々あまり酒に強くない詩音は、少量で酔ってしまうのだ。
膝に乗せてグラスを持たせてやり、その味にご機嫌な詩音の髪を梳きながら想いを込めてささやく。
「今朝は本当にすまなかった…虐めるつもりなんてなかったんだ。
ただ…素直になってかわいく乱れる詩音を征服したかっただけで…
締め出されたのは辛かったぞ。
でも…ドアの向こうで叫んでたお前の声を聞いて、凹んだけどうれしかった。
やっと心の扉が開いた って。
詩音、もう、お前は大丈夫だよ。
自己否定に縛られてた過去の詩音と決別できたんだ。
自信を持って前を向いて進めばいい。」
「…継…」
胸に擦り寄る愛おしい存在。
その肩を抱き、グラスの液体を一気に飲み干した。
緩やかにアルコールが体内に流れていく。
うっとりと目を潤ませ、頬を赤く染めた美しい伴侶は、すっかり酔ってしまったらしい。
グラス一杯でかわいいもんだ。
空になったグラスを二つ、テーブルの上に置いて、詩音を抱きしめ直した。
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