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夫の自覚⑥
火照った詩音の身体からは甘く蕩けそうな匂いが漂う。
俺を見つめる目は潤み、熱い吐息は果実の匂いがする。
「ふふっ…詩音、たったひと口で酔ってしまったのか?」
「…継…何だかふわふわします。」
俺の首に腕を絡めた愛おしい伴侶は、頬を染めて ふにゃりと笑う。
「このまま…ベッドへ連れて行くぞ。」
「…はい…」
鼻先にキスをすると優しく抱き上げ、頬に ちゅっちゅっとしつこいくらいにキスをしながら寝室へ向かう。
擽ったそうに身を捩る詩音が、かわいくてならない。
早く愛したくてうずうずする下半身を意識しないようにしているのに、酔っ払いの詩音は
「…継、おれがほしいんですか?」
なんて煽りやがる。
「あぁ、そうだよ。
お前がほしくてほしくて…堪らないよ。
早く…愛させてくれ…」
「俺…俺も…継がほしい…
でも。」
「でも!?」
何だ?ダメだとでも言うのか?
詩音…俺は…俺は…許してもらえてないのか?
「…今朝みたいなのは嫌です。
優しく…蕩けるように…抱いて下さい…」
!!!!!
「あぁ…詩音…わかった、わかったぞ!
もう、意地悪しないから…たっぷりと愛させてくれ…」
あぁ、もう、コイツは!
俺の心を鷲掴みにしやがって!
一体、俺をどうするつもりなんだ!?
足で捲り上げた布団が空を舞った。
シーツの上に横たえた詩音は、宛 ら“眠れる森の美女”か!?
アルコールのせいで、白い肌がほんのりと赤く色付き、呼吸も早くなっている。
脈打つ鼓動は飛び跳ねそうな音を立てている。
燃え立つ色香と、甘ったるい匂いが鼻腔を擽る。
枕元に跪いてその手を取り、恭しく捧げ持って言う。
「お望み通りに…愛しているよ、詩音…」
ちゅっ と手の甲にキスをすると、詩音はうっとりと俺を見て微笑んだ。
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