353 / 829
甘える獣③
一週間後…
今朝も また『キスで起こして』と甘える継に五秒間のキスをして起こした。
毎日こんなことが続いて、やっと週末。
仕事も終えて帰る車中で。
ちらちらと運転する横顔を盗み見る。
はぁっ…相変わらずの格好良さ…
こんな素敵な人がどうして俺の伴侶なんだろう。
でも
継じゃなきゃダメ。
継じゃなきゃ嫌だ。
ぶわりと放たれる自分のフェロモンに慌ててしまう。
急いで窓を開けて誤魔化そうとするけれど、微かに震える継の肩を見て諦めた。
全部バレてる。
声を押さえて笑わないで!
継からも同じように俺を侵食する匂いがしてくる…
家に着くまではお互いに無言。
言葉はなくても、言いたいことは大体わかる。
番の匂い…
便利なようでタチが悪い。
いいことも悪いことも全てわかってしまう。
「さあ、着いたぞ。」
シートベルトを外すのにモタモタしていると、助手席のドアが開いて、継が覆い被さってくる。
ひっ と息を飲んだが、カチャリとベルトを外す音が聞こえ
「ふっ…どうした?キスでもされるかと思ったのか?
じゃあ、ご希望通りにしないとな…」
顎を持ち上げられ、噛み付くようにキスされた。
最近…継の甘え方が度を増している…ような気がする。
継は二人っきりになると急に“甘えた”に変身することがある。
俺も大概甘えてばかりだけれど。
俺のが移った!?
いや…そんなことはない。
外では表情を崩さず、テキパキと指示して仕事一筋の継が、家では俺をでろでろに甘やかして、自分も尻尾を振ってお腹を見せて甘える猛獣のようだなんて。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!