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甘える獣⑥
雛鳥のように口を開けて待つ継の姿に、必死で笑いを堪えながら食べさせ、俺もまた口に入れてもらい食べ終えると、ぴったりとくっ付いて離れない継を纏わせたまま、片付けを済ませていく。
今からの行為を思うとドキドキが止まらない。
継は相変わらず密着したままで、俺の手が空くのを今か今かと待っている。
「…継…動きにくいです。」
「だって、もう、1ミリも離れたくない…」
「…食後すぐの入浴は身体に良くないです。」
「じゃあ、すぐベッドへ行こうか?」
「…綺麗にしないと、絶対に嫌です!」
むうっ と膨れる猛獣。
ワザとごりっと固いモノを押し当ててくる。
「…継…意地悪するとお預けです!」
渋々といった感じで少し腰を引いた。
引っ付き虫を纏わせて片付けを終えると
「…詩音…」
待ち兼ねた継に甘い声で耳元でささやかれる。
ぞくりと電流が背中を駆け抜けた。
たった一言名前を呼ばれただけで、思わず腰が抜けそうになるのを支えられ、物も言わずに横抱きにされてバスルームへ連れて行かれた。
そっと床に降ろされて、しゅるり、ぱさり、とネクタイから順番に一枚ずつ丸裸にされていく。
大した抵抗もせず、継にされるがままの俺。
心臓はバクバクと跳ね、俺をあられもない姿にしていく夫の手を追って見ているだけ。
早く…早く、愛して…
俺もあなたを愛したい…
淫乱な嫁だと笑わないで。蔑まないで。
綺麗な姿で、あなたと愛し合いたい…
気持ちが昂り、涙が滲んできた。
あぁ…また泣き虫だと言われちゃう。
でも…でも…
「…詩音…嫌、なのか?」
涙を拭う継に問われる。
ふるふると首を振り、何か言おうとするが言葉にならない。
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