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甘える獣⑧

「詩音…行こう…」 掠れた声が俺を動かした。 腰を抱かれ、シャワーの下に連れていかれる。 目を閉じるように言われ、肩から掛けられるお湯と、背中からぴったり抱きしめられ、肌を滑る継の大きな手の平を感じながら、視界のなくなった心(もと)なさの中、敏感になっている身体を持て余し始めた。 次第に芯を持ち始める俺自身に気付いた継は、するりと手を滑らせて、それを手の平に包み込んだ。 「あっ」 びくんと背中を仰け反らせた反動で、継に体重を掛けてしまうが、難なく受け止められ、その体制のままキスをされた。 「んむっっっ」 目を瞑ったまま口を塞がれ、上から落ちてくるお湯に鼻を潰され、息ができなくなった。 苦しくて苦しくて、首を左右に振って逃げる。 それを追いかける継に、また口を塞がれる。 「んんんっ」 壁に押し付けられた背中は、その冷たさを吸って一瞬ヒンヤリとしたけれども、身体の内から燃えてくる熱が、逆に燻る熱さを伝えていく。 「…詩音…」 甘ったるい匂いが鼻腔を擽る。 あうっ… ぴりっと、胸に痛痒さが走った。 薄眼を開けて視線を下に向けると、継が乳首に吸い付き、余った片方を指で摘んでいた。 少しの刺激で尖り切ったそこは、継の愛撫で完全に芯を持ち、それを受け入れていた。 カリカリと爪を立てて弾かれ、快感を思い出した先端から、ぴりぴりと甘い痺れが身体中に走り始めた。 ボディソープの香りがしたと思ったその時、後孔にぬるりとした感触がして、余りの気持ち良さに『洗われている』と頭で理解するまでに数秒かかった。 「やだっ、継! 自分でするから、やだっ、止めてっ!」 つぷつぷと指を少しずつ入れながら 「やだ。俺にさせろ。」 暴君だ…さっきまで甘えただったのに…

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