372 / 829
獣の躾③
俺は沸々と湧いてくる怒りを必死で押さえながら言った。
「…『ちょっとだけ』何をしたんですか?」
「え?えーっと…その…」
「何をしたんですか…」
「うっ…………あの…その…えーーっと…
寝ている詩音を…その…
抱きました!!!!!」
切れそうになる血管。
怒りのあまり逆流する血液。
わなわなと両手は震え、悔しくて涙が出てきた。
「しっ、詩音!?
すまん、すまない、許してくれ、ごめん!」
シーツに頭を擦り付けて、土下座をする継。
涙を拭い、冷たい目でそれを見ながら
「俺、昨夜 は『無理だ』って言いましたよね?
『お願い、寝かせて』って言いましたよね?」
「…はい。」
「あなた『大人しくする』って仰いましたよね?」
「…はい。」
俺のあまりの怒りように、継はベッドの上で正座していた。
項垂れて俺の顔をまともに見れていない。
俺は無言でベッドの下に散らばった服を身に付け始めた。
「…詩音?」
継が情けない声で俺を呼ぶ。
キッ と睨め付け、空気が凍りそうな声音で言い放った。
「今日から寝室は別です。
今から指一本俺に触れないで下さい。
いいですね?」
「ふえっ!?そんなぁ…詩音…それは」
「い・い・で・す・ね?」
「うっ………」
俺は継を残し、すたすたと寝室を後にした。
信じられないっ。
継のばかぁーーーーーっ!
意識のない俺を…俺を…信じられなーーいっ!
ケダモノっ!
駄犬っ!
絶倫スケベオヤジっ!
「継のばかぁーーーーーっ!」
俺の絶叫がリビングに響いた。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!