374 / 829
獣の躾⑤
朝ご飯とお弁当…作らなきゃ…
はあっ とため息をついて、がちゃがちゃと支度を始める。
『どうしよう、どうしよう』と、継の周りの空気がざわついている。
あの俺様継が、オロオロしている。
俺に声を掛けるのすら躊躇っている…
そんな継に
「今日は別々に帰ります。
買いたい物があるので、篠山さんにお願いしますから。」
「えっ!?…詩音…俺も一緒じゃダメなのか?
…俺も行きたい…」
「たまには一人でゆっくり買い物したいんです。」
バシッと切るように言い放つと、継は何か言い掛けたが口を噤 み
「…わかった。じゃあ、晩ご飯は俺が準備しておくから…何が食べたい?」
「いえ、継ご自身のだけで結構です。
俺の分はお気になさらず。済ませて来ますから。」
沸々と怒りと悲しみが溢れてくる。
俺の怒りが、匂いだけでなく、あからさまに言葉と態度に出てしまっている。
自分でもかなり意地悪だと思うけれども、改めることができない。
それだけ昨夜のことは腹が立って仕方がないんだ。
しゅん…と項垂れた継は、悲しそうな顔をして寝室へ とぼとぼと戻って行った。
その後ろ姿を見て胸がきゅっと傷んだが、今は怒りの方が先行している。
反省するくらいなら最初からヤらなきゃいいでしょ!?
いくら夫夫だからと言っても、片方が嫌だと拒否してるのに無理に行為に及べば、それは夫夫間レイプじゃないの?
俺は確かに夕べは『嫌だ』という意思表示をしたんだ。
それなのに継は、眠って意識のない俺を勝手に…
…俺だって、怒る時は怒るんだから。
書籍の購入
ともだちにシェアしよう!