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獣の躾⑥
無言の朝食。
食器の触れる音と、咀嚼し飲み込む音しか聞こえない。
テレビのスイッチを入れることすら忘れていた。
「ご馳走様でした…」
継からはずっと、許しを請う、そして反省と戸惑いの匂いがしてくるが、俺は今回は簡単には許すつもりはなかった。
一度許せば、また繰り返される。
継の性欲は底なしだ。
今までは俺も(心底嫌ではなかったから)継の望む限り、そうしてきた。
俺のことを心から愛してくれてるのは十分わかるし、俺だって同じ思いだ。
でも
でも…
夫夫だからと言って、何でも許されるものなのか?
俺は…俺はただの性欲処理?はけ口?
カラダだけの存在?
愛してるって、口だけ?
そう考えると、ものすごく悲しくなって、このどうにもならない怒りに繋がっている。
ムカムカイライラしながらも、いつものように片付けて支度を済ませ、出勤しようと玄関へ行こうとしたその時
「…今日は休む。
篠山さんと中田部長に電話したから。
詩音も今日は休みだ。」
それを聞いた途端、頭が沸騰した。
わなわなと身体が震え、握りしめた拳の、手の平に爪が食い込んでいく。
噛んだ下唇は切れて、口内に血の味が広がっていった。
「…あなたは…あなたは社長でしょう?
一国の主ですよ!
どうしてプライベートな感情だけで、そんな簡単に会社を休むなんてできるんですか?
あなたの下でどれだけの人達がいて動いてくれてると思ってるんですか?
俺は…あなたの伴侶だけれども、俺だって会社の社員なんです!
そんなことくらいで一々会社を休むなんて、あり得ませんっ!」
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