378 / 829

獣の躾 side伊織①

珍しいことに、朝イチで詩音君からメールがあった。 『おはようございます。朝イチで申し訳ありません。 伊織さんにぜひご相談させていただきたいことがあるのですが… もしご都合がよければ、今夜お時間いただけませんか? 時間も場所も伊織さんに合わせますので、どうかよろしくお願い致します。』 短文だが、切羽詰まったような感じ。 どうしたんだろう…継君がまた何かやらかしたのではないか? 今夜…丁度いい! 俊哉さんは出張でいなくなる! あの人がいるとややこしくなるから… 詩音君を家に呼んで、ご飯食べながらゆっくり聞いてあげよう。 明日は休みのはずだし、そのまま泊まってもらってもいいな… 『おはようございます。 丁度、俊哉さんに届ける書類があるから、夕方詩音君の会社に行くんだ。 出張でいなくなるから、よかったら家でご飯食べない? そのまま一緒に帰ろう。 俺でよければ何でも聞くから。 定時で上がれる?』 すぐに返信があった。 『甘えちゃって申し訳ありません。 いいんですか? ありがとうございます! はい、大丈夫です。定時で上がります。』 『じゃあ、駐車場で待ってるね。 下まで降りてきたら電話して!』 『お手数お掛けして申し訳ありません。 よろしくお願い致します。』 『おけー』 継君…今度は何をやらかしたんだ? 君は、この間の番拒否症候群で懲りてるんじゃないのか? 「おーい!伊織ぃーー♡ このネクタイどうかなぁー♡」 …ややこしいのがここにもいたよ。 「はいはい。ネクタイがどうしたんですか?」 甘ったれの大型犬を構いにクローゼットへ向かった。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!