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獣の躾 side伊織②

鏡に向かい三本のネクタイを持ち、取っ替え引っ替えやってる夫。 「このスーツにはこれ、こっちのスーツにはこれ。これはこっち。 二泊三日でしょ? 荷物は出来るだけコンパクトにして下さいね。 あっ」 後ろからぎゅっと抱え込まれて、俊哉さんの雄のフェロモンが纏わり付く。 「伊織…行きたくない。離れるのヤダ。」 「…何言ってるんですか…お仕事ですよ。 早く支度しなくちゃ。 夕方、継君の会社に頼まれてる書類持って行きますから、その時にまた会えますよ。 ほら…俊哉さん?」 頭を撫でてあげると「うーーっ」と唸りながら益々絡める腕に力を込める。 「夜眠る時に、隣に伊織がいないんだよ? そんなの俺に耐えられると思うか?」 「そんなこと言っても、俺はあなたの出張について行くことはできませんよ。 ほら…いい子だから…ね?」 そう言っても、俊哉さんは俺の首筋に顔を埋め、すんすんと匂いを嗅いでいる。 あー…このまま十五分コースか… 出張の度にこれだもんな。 甘えたの俺の夫。 いい年なんだから、いい加減に(つま)離れしてほしいものだ。 いつもの、儀式のような行為に、俊哉さんは少し落ち着いたのか、ちゅっとキスをしてやっと腕の力を抜いてくれた。 「ねぇ、帰ったら…ね?ね?」 俺を正面から抱きしめ直して、首から上にキスの雨が降ってくる。 おねだりだ。そう、セックスの… 「いい子で頑張ってきたら、考えます。」 むうっと膨れた俊哉さんは、濃厚なキスをすると 「頑張るに決まってるじゃないか。」 と、とびきりの笑顔でまたキスをした。

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