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躾けられる獣④

結局、一人寂しく昼食を終えた。 篠山さんは急き立てるように、次々と仕事を持ってくる。 気は進まないが仕方がない。 やることをやらないと、詩音にまた怒られてしまう。 そうやってデスクワークをしていると、あっという間に定時になった。 「私は詩音様との約束があるので、これにて失礼致します。 社長、呉々も冷静さを失わないようにお願い致します。」 「あ…あの…篠山さん…」 「はい、何でしょうか。」 「あ…いや、詩音をよろしくお願い致します。」 「はい。承知しております。では…」 ばたん うわぁーーーっ! 寂しい… 寂しい… 寂しいっ!!! 詩音に会いたい! 詩音の匂いを嗅いで抱きしめたい! 詩音にキスしたい! 詩音に… 思わず泣きそうになる…俺、こんな奴だったのか… 残業でもしようかな…でも、全くヤル気ゼロ。 帰ろうかと思ったけど、あの詩音のいない家にたった一人でいるのも辛いし… ハッ! 待てよ…残り香…詩音の匂い… やっぱり帰ろう! あの愛おしい匂いがないと、精神的におかしくなる。 詩音の匂いのするものを掻き集めて、抱いて眠ろう、そうしよう! …俺、変態か? それを詩音に見られたら、また叱られる? …それでもいいや。大人しく待っていよう。 詩音、早く帰っておいで。 俺…土下座でも何でもするから… 頼むから… 俺はもう、詩音なしではいられない。 詩音のいない生活なんて耐えられない。 俺はそうだけれど、詩音、お前は? お前は俺がいなくても平気なのか? 一人でどこかへ行けるほど、俺がいなくてもいいのだろうか… 辛い。とにかく辛い。 はぁーーっ とため息をついて、部屋を出た…

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