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伊織さんの夫夫生活②
重低音に軽やかさが混じるエンジン音が心地いい。
このままサーキットでもオッケーなくらい。
継の車もいいけれど、流石外車だ。ワクワクする。
「カッコいいなぁ…伊織さんがこういうタイプの車がお好きだとは思いませんでした。」
「軽四のイメージ?」
「あははっ、はい。」
「一応、俺も男だからね。車にはこだわりたいんだ。
前乗ってたのはボルボだったんだ。あれも良かったんだけど、『何でも好きなのを』って言われて、つい…ね?
無理だろうって、揶揄うつもりで言ったら、本当に届いちゃって。
あの時は、流石にマズかったなって反省したんだけどさ。」
あははっと笑う伊織さんは
「今日は俊哉さんもいないし、よかったらそのまま泊まって行ってよ。
なかなかこういう機会はないからね。
あ、継君には俺から電話しておくよ。
詩音君がいないと、一晩中泣くかもしれないけど。」
「…え…ご迷惑じゃないんですか?
でも、俺、何も準備してないです。」
「俺のがあるから、大丈夫!
今日は二人焼肉だー!たくさん食べてね!」
「すみません、お言葉に甘えちゃいます。
よろしくお願いしますっ。」
それからお互いの近況を話しているうちに、伊織さんのお家に到着した。
女装させられた時にお邪魔して以来のお家は、相変わらずキチンと整えられ、伊織さんはやはり主夫の鑑だと感心していると
「先にお風呂入っちゃってよ。俺はもう済ませてあるからゆっくりしてきて。
用意してあるから、部屋着に着替えて寛いで!」
とバスルームへ追いやられた。
もう こうなったら、とことん甘えさせてもらおう!
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