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伊織さんの夫夫生活④
タンっとテーブルに空のグラスを置いた伊織さんは
「そりゃあ継君が悪いに決まってるよ。
全く、覚えたての猿かって。
詩音君、怒って当然だよ、それ。
…うちの俊哉さんも酷かったけど、継君もなかなかだな…」
「香川先生もですか!?
…伊織さん、あの香川先生とどうやって結ばれたんですか?」
「うーん。俺達もね、運命の番なんだよね。
俺が高校二年…17才で、俊哉さんが23才の時、出会ったんだ。
学校からの帰り道、嗅いだことのない魅惑的な匂いにつられて、ふらふらと辿り着いたのがある喫茶店でね。
たまたまそこにいたのが、当時研究員だった俊哉さんで。
彼、アメリカで博士号取得して、日本のバース研究向上のために帰ってきてたんだ。
会った瞬間に…詩音君ならわかるだろ?
俺のSP振り切って自宅に連れ込まれて、無理矢理犯され頸噛まれて、番契約されちゃったんだ。
俺、未成年だったんだよ?
俺の家、警察一家でさ…父は警視長、叔父は警視、兄は警察学校のトップエリートでね…俺もその道に進むつもりだったんだ。
当然、俊哉さんのしたことは犯罪なんだけどさ。
権力にもの言わせて内輪で処理して…
無理矢理別れさせられたΩの末路をみんな十分わかってるからね。
運命の番を引き離すことはできず、ほとぼりが冷めるまで、俺達アメリカに住むことになったんだ。」
俺はびっくりしすぎて、箸が止まったままだ。
「子育てしながらだったから大変だったけど、あっちで大学も行って、FBIに入って、それからしばらくして、そろそろいいだろう…って許可が出たから帰国したんだよ。」
サラッと言ってるけど、子育て?FBI?
この人…どれだけすごい人なんだろう…
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