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伊織さんの夫夫生活⑩
side:伊織
「伊織さん、本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。
また遊びに来させて下さい!
本当に、本当にありがとうございました。」
目を真っ赤にした詩音君は、迎えに来た継君に連れられて帰って行った。
若いなぁ。
俺もあんな頃があったんだよなー。
ふふっ。かわいいなぁ、詩音君。
あれは、継君がメロメロになるはずだ。
まぁ、とにかく仲直りした感じだから、これでよかったんだよ、きっと。
鼻歌を歌いながら後片付けを済ませ、ふと携帯を見た。
あ…俊哉さんからだ…
『いおりぃ…伊織がいなくて寂しいよぉ〜
すぐ帰るから、待っててね♡
愛してるよ♡♡♡』
ふふっ。幾つになっても相変わらずの甘えん坊。
俺の前では牙を抜かれた猛獣のくせに、一歩外へ出たら泣く子も黙るバース研究の第一人者。
『俺も…あなたがいなくて寂しいですよ。
…早く帰って来て下さいね。』
こんな台詞思ってても、普段は絶対送信しないし、言ってもあげない。
けど…
『待ってますから。
愛してますよ。』
柄にもなく、そう打って送信してしまった。
若い二人のラブラブ振りに当てられたのか?
途端に鳴り響く着信音。
はあっ…しまった。調子に乗せたか…
「はい。」
「伊織っ!いーおーりーぃー!
帰る!もう帰りたい!絶対に早く帰る!」
ぐるぐると喉を鳴らしている様が目に浮かぶ。
「…ダメですよ、ちゃんとお仕事しないと。」
「だってぇ…伊織…ぐすん。
伊織がいないんだもん。寂しい。
…帰りたい…」
「くすくすっ…俊哉さん、俺はどこにも行きませんから。
きちんとお仕事して、俺に顔向けのできるようにして帰ってきて下さいね。」
と諭して一方的に電話を切った。
さぁ、帰ってきたら後が大変だけど…
愛してますよ、俊哉さん。
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