394 / 829

伊織さんの夫夫生活⑩

side:伊織 「伊織さん、本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。 また遊びに来させて下さい! 本当に、本当にありがとうございました。」 目を真っ赤にした詩音君は、迎えに来た継君に連れられて帰って行った。 若いなぁ。 俺もあんな頃があったんだよなー。 ふふっ。かわいいなぁ、詩音君。 あれは、継君がメロメロになるはずだ。 まぁ、とにかく仲直りした感じだから、これでよかったんだよ、きっと。 鼻歌を歌いながら後片付けを済ませ、ふと携帯を見た。 あ…俊哉さんからだ… 『いおりぃ…伊織がいなくて寂しいよぉ〜 すぐ帰るから、待っててね♡ 愛してるよ♡♡♡』 ふふっ。幾つになっても相変わらずの甘えん坊。 俺の前では牙を抜かれた猛獣のくせに、一歩外へ出たら泣く子も黙るバース研究の第一人者。 『俺も…あなたがいなくて寂しいですよ。 …早く帰って来て下さいね。』 こんな台詞思ってても、普段は絶対送信しないし、言ってもあげない。 けど… 『待ってますから。 愛してますよ。』 柄にもなく、そう打って送信してしまった。 若い二人のラブラブ振りに当てられたのか? 途端に鳴り響く着信音。 はあっ…しまった。調子に乗せたか… 「はい。」 「伊織っ!いーおーりーぃー! 帰る!もう帰りたい!絶対に早く帰る!」 ぐるぐると喉を鳴らしている様が目に浮かぶ。 「…ダメですよ、ちゃんとお仕事しないと。」 「だってぇ…伊織…ぐすん。 伊織がいないんだもん。寂しい。 …帰りたい…」 「くすくすっ…俊哉さん、俺はどこにも行きませんから。 きちんとお仕事して、俺に顔向けのできるようにして帰ってきて下さいね。」 と諭して一方的に電話を切った。 さぁ、帰ってきたら後が大変だけど… 愛してますよ、俊哉さん。

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!