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やっぱり、大好き⑤

さっさと自分の服を脱ぎ捨て、俺を抱き込んで布団に潜った継は、すんすんと俺の匂いを嗅ぐと、恨めしそうに呟いた。 「詩音だって…俺のことを欲しがってるのに… どうしてダメなの?」 図星だ。 思わず、かぁっと顔を赤くして 「それでも優しく包まれて眠りたい時だってあるんですっ! もし、俺が眠ってしまって起きなくて、それをいいことに昨夜みたいに手を出したら…」 「…出したら?」 低い声で答えた。 「俺にも考えがあります。」 継が、びくりと身体を震わせた。 はあっと大きなため息をついた継は 「…わかった。約束する。 眠っている時には手は出さないから。 だから…明日は抱いてもいい?」 その言葉になぜかカチンときた。 それ、何? 『明日は抱いてもいい?』って何? 今日がダメなら明日ってこと? 俺って…『そのためだけ』に必要なの? 何だか…悲しくて虚しくなってきた。 腕を突っ張って継から離れた。 「詩音?」 「…継…俺はあなたの性欲処理のために一緒にいるのではありません。 俺は…俺は… もう、いいです。」 散らばった服を かき抱きベッドから滑り降りると部屋を出た。 「詩音?待って!!」 継が飛んでくる前に、自分の部屋に戻って鍵を掛けた。 ガチャガチャ ガチャガチャ ドンドンドン ドンドンドン 「詩音?しおーん!開けて!開けてくれ! 詩音! そんなつもりはないから! お願い!顔を見せて! 詩音!詩音!」 しばらくドアを叩く音と俺を呼び続ける継の声が聞こえていた。 一応、俺の部屋も用意されていたが、いつも継の寝室に行くから、クローゼット以外使うことはなかった。 皺一つないピンと張ったシーツ。 ここに来てから一度も使ったことのないベッド。 「しおーん!詩音、出てきてー!」 寝巻きに着替えて布団に潜り込む。 俺を呼ぶ継の声が聞こえないように耳を塞ぐ。

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