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やっぱり、大好き⑥

俺がΩだから。 Ωの社会的地位が逆転したとはいえ、偏見は根深い。今までだって、ずっと慰み者だったΩ。 『そういう役割』の種だから。 継だって、そう(・・)思ってるんじゃないの? 『俺のヤりたい時にヤらせろ』って。 だから、『今日がダメなら明日』って台詞になるんじゃないの? いくら運命の番だとはいえ、結局そうなのか。 ただの、αのはけ口… その(・・)ためだけの存在なのか? いくら心を通わせても 何度肌を重ねて愛し合っても 数え切れないほどの『愛してる』という言葉をささやかれても 継はαで俺はΩ。 埋まらない溝。 それでも。 好きなんだ。大好き。嫌いになれない。 愛してるんだもん。 継しかいらない。 継だけ。 初めて好きになって、身も心も捧げた人を嫌いになんてなれない。 ぐすっ…えぐっ、ぐすっ… かちゃり 「詩音…」 えっ?何で鍵掛けてるのにドアが開くの? 合鍵? ゆっくりと、継が近付いてきた。 俺の側に腰掛けると… ぎしっ とベッドが傾いた。 「詩音…誤解しないで…ちゃんと俺の言うことを聞いて。 性欲処理だなんて、そんなこと一度も考えたことない。 詩音を愛してるから、一つになりたいだけだ。 好きだから…愛してるから… それだけの理由じゃダメなのか? 愛する者と交わりたいと思うのはいけないことなのか? 詩音が俺に抱かれるのが嫌なら…いいと言われるまで、いつまでも俺は待つよ。 でも… お前の温もりが恋しい。 お前の匂いが恋しい。 お前の心が…ほしい。 俺を一人にしないで…お願い、詩音。」

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