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やっぱり、大好き⑩
翌朝、いつもの時間に目が覚めた。
無意識に隣を手で探るが、平たいシーツが触れるのみ。
あぁ、そうだ。
夕べ『しばらく別々に』と言われたんだった。
もぞもぞと起き出して洗面を済ませると、キッチンへ移動した。
朝ご飯とお弁当を準備しながら、胸のどこかにぽっかりと隙間ができたような空しさに襲われていた。
継が足りない。
たった ひと晩離れて寝ただけで、こんな虚無感に襲われるなんて。
それだけ、継はもう、俺の一部になってしまっていた。
こんなに継に依存していたのだろうか。
ココロもカラダも?
大袈裟かもしれないが、身体の一部をもぎ取られたような、そんな感じがする。
ぶるっと身震いして、大きく深呼吸した。
詩音、落ち着いて。
大丈夫、大丈夫。
一人でも大丈夫。
「詩音、おはよう。」
その声にびくっと反応した。
「…おはようございます。」
「おっ、美味そうだな。お腹空いたよ。
食べていい?早く食べよう!」
「はい。どうぞ。」
ご飯をよそって手渡す。
どうして?
何でそんなに普通なの?
…俺と離れても平気なんだ。
俺ばっかり…俺だけが『継が足りない』って思ってるんだ。
気分が落ちていく。
俺って勝手だ。
あんなに怒ってたくせに、構われなくなると不貞腐れるなんて。
子供だ。まるで子供。
ほしいものを買ってもらえなくて、地団駄踏んで駄々こねる子供と一緒だ。
しっかりしろ、詩音。
「詩音?どうかしたのか?食べないと遅刻するぞ。」
「…いいえ、何でもありません。
ちょっと食欲がなくって。」
「それは心配だな。帰りに病院に行こうか。」
「いえ、大丈夫です。」
やっぱり、やっぱり、継の側にいたい。
やっぱり、大好き、継…
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