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後悔②
俺が思う以上に、詩音の自己嫌悪の塊は癒えていない。
やっと心を開いてくれたと思えば、こうやってまた閉じて鍵を掛けられる。
どうすれば、詩音の心の中に入っていけるのか。
どうすれば、心から俺を受け入れてくれるのか。
少しずつは良くなっているとは思う。
それでも…
今、詩音は傷付いている。
俺のせいで。
この熟れた想いをどうすればいいのか。
俺の想いはどうすれば詩音に伝わるのか。
一体、どれだけ繰り返せば信じてもらえるのだろう。
『お前は性欲処理なんかじゃない。
たった一人しかいない大切な俺の愛する伴侶だ。
愛してるから抱き合いたい。
愛してるから抱いてほしい。』
情けない。自分自身が情けない。
愛する伴侶一人を大切にできないなんて。
その傷を更に抉って壊しそうになるなんて。
最低だ。
俺は何て最低な夫なんだ。
それにしても…
あまりに強過ぎる自己否定の感情。
いくらスーパーΩとはいえ、お袋に右京さん、伊織さん…にしても、俺の周りのスーパーΩの人達は、それほど強くはない。
その原因は何なのだろう。
学生時代に襲われそうになったと聞いた。
相手が逮捕された時に、酷い侮蔑の言葉を吐き捨てられたとも。
それか?
まさか本人に聞く訳にもいかないから、お義兄さんに聞いてみようか…
非常識な時間帯だとは思ったが、背に腹はかえられず、画面をタップしていた。
電話はあんまりだと思ったので、ラ◯ンで事の次第と、できれば明日にでも話を聞かせてほしい旨の文を送った。
程なく着信があった。
『…それだけが原因ではないと思う。』
と前書きされ
『…午後3時なら時間が取れます。
お手数ですが、店までご足労願えませんか?』
『承知致しました。
ご無理を言って申し訳ありません。
どうかよろしくお願い致します。』
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