406 / 829

後悔②

俺が思う以上に、詩音の自己嫌悪の塊は癒えていない。 やっと心を開いてくれたと思えば、こうやってまた閉じて鍵を掛けられる。 どうすれば、詩音の心の中に入っていけるのか。 どうすれば、心から俺を受け入れてくれるのか。 少しずつは良くなっているとは思う。 それでも… 今、詩音は傷付いている。 俺のせいで。 この熟れた想いをどうすればいいのか。 俺の想いはどうすれば詩音に伝わるのか。 一体、どれだけ繰り返せば信じてもらえるのだろう。 『お前は性欲処理なんかじゃない。 たった一人しかいない大切な俺の愛する伴侶だ。 愛してるから抱き合いたい。 愛してるから抱いてほしい。』 情けない。自分自身が情けない。 愛する伴侶一人を大切にできないなんて。 その傷を更に抉って壊しそうになるなんて。 最低だ。 俺は何て最低な夫なんだ。 それにしても… あまりに強過ぎる自己否定の感情。 いくらスーパーΩとはいえ、お袋に右京さん、伊織さん…にしても、俺の周りのスーパーΩの人達は、それほど強くはない。 その原因は何なのだろう。 学生時代に襲われそうになったと聞いた。 相手が逮捕された時に、酷い侮蔑の言葉を吐き捨てられたとも。 それか? まさか本人に聞く訳にもいかないから、お義兄さんに聞いてみようか… 非常識な時間帯だとは思ったが、背に腹はかえられず、画面をタップしていた。 電話はあんまりだと思ったので、ラ◯ンで事の次第と、できれば明日にでも話を聞かせてほしい旨の文を送った。 程なく着信があった。 『…それだけが原因ではないと思う。』 と前書きされ 『…午後3時なら時間が取れます。 お手数ですが、店までご足労願えませんか?』 『承知致しました。 ご無理を言って申し訳ありません。 どうかよろしくお願い致します。』

書籍の購入

ともだちにシェアしよう!