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後悔⑥

俺は思い出したことがあった。 「お義兄さん、詩音に言われたことがあるんです。 『もし…子供ができたら…その子がΩでも…愛してくれますか?』 って。 それって…そういうこと、ですよね?」 お義兄さんは目を見開いて、ため息をつき、大きく頷いた。 「継君…詩音の自己否定は、恐らくその時の母のΩ否定…いや、詩音の存在そのものの否定の言葉からきているんだと思う。 …ちょっと二人を呼ぶよ。 これは放ってはおけない。 詩音の人生と、これからの君達の結婚生活にも大きく関わることだから。」 お義兄さんはそう言って、電話を掛け始めた。 しばらく話をしていたようだが、俺の方を向くと 「今からすぐに来ると言ってる。三十分くらいかかるかな… 継君、時間大丈夫?」 「はい!詩音のためなら。どれだけでも待ちます。」 「そうか。ありがとう…継君、詩音の伴侶が、君で本当に良かった… 感謝します…ありがとう…」 「お義兄さん、お礼を言いたいのは俺の方です。 詩音を俺に嫁がせて下さって、本当にありがとうございます。」 目の前が霞んでくる。 詩音…どんなに辛かったんだろう。 もう、大丈夫だから。 俺が、俺がずっとお前を守るよ。 他の誰が何を言おうと。 俺が盾になり、命を懸けて必ず守るから。 それからお互いに無言で、それぞれに想いを巡らせていた。 まもなくノックの音がした。その返答を待たずにお義母さんが飛び込んできた。 「母さん!」 「正樹!どういうことなの? 私のせいて、詩音がずっと苦しんでいたかもしれないって! …継君!教えて?どうして?」

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