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懺悔④

俺にしがみ付いて、詩音が号泣する。 出会ってから数え切れないくらいに詩音の泣く様を見てきたが、今まで聞いたこともない、あまりに切なく悲痛な泣き声に、胸が痛んで苦しい。 震える華奢な肩を強く抱きしめ、俺も一緒に泣いていた。 …詩音のご両親も、お義兄さんも、義弘さんも…その場にいた全員が泣いていた。 産まれたことを責め、自分の存在を認めず、自己否定の塊になっていた俺の詩音。 もう、自分を責めなくてもいいんだ。 俺達は、お前を心の底から愛してるんだよ。 どれくらいの時間が過ぎたのだろう。 ひくひくとしゃくり上げていた詩音の声が聞こえなくなった。 「詩音?」 俺の腕の中で、天使のようにあどけない顔で、詩音は気を失ったように眠っていた。 くったりと力の抜けた詩音を横抱きに抱え直し、頭を胸にもたれさせた。 「…泣き疲れて眠ってしまったようです。 お義父さん、お義母さん、お義兄さん、義弘さん…本当にありがとうございました。 目覚めないとわかりませんが、詩音の閉じられた心がきっと開いてると思います。」 「継君、君のお陰で自分達の過去の過ちに気付くことができたんだ。 私達のせいで大切な詩音を一生傷付けたまま、誤解を解くこともなく終えるところだった。 本当に、本当にありがとう… 正樹、義弘君、詩音を助けてくれて、本当にありがとう…」 お義母さんは、気が抜けたように放心状態で座り込んでいた。 お義父さんがそっと抱きしめると、はっと気を取り戻したお義母さんは 「詩音は?詩音はどうなったの?」 と、詩音の元に飛んで来た。 頬の乾いた涙の跡にそっと触れながら 「長い間、苦しめてごめんなさい。」 詩音がゆっくりと目を開いた。 「詩音?あぁ…詩音!」 詩音の手を握りしめて、またお義母さんが泣き出した。

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