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懺悔⑥
テーブルには、これでもかというくらいに大皿がいくつも並んでいて、美味しそうな匂いに喉が鳴る。
「美味しそう!義弘さん、これ全部お一人で?」
「うん!継君と詩音君が来てくれるって連絡があったから、張り切っちゃった。」
「ごめんなさい、突然に…」
「全然!喜んでもらえたら、それでうれしいし!
さあ、座って、座って!」
みんなが席に着き、お父さんの号令で“いただきます”が終わった途端に、みんなが一斉に箸を動かす。
「義弘さん、美味しい!後でこれ、味付け教えて下さい!」
「もちろん!あ、これも自信作なんだよ。
どうぞ。」
賑やかに、和やかに、笑いが漏れ、食事が進む。
腫れぼったい目のお義母さんが、詩音を見て微笑んでいる。
それに気付いた詩音も微笑み返している。
これで本当に、詩音の心の闇が解き放たれた…と思いたい。
そうであってほしい。
ひたすらに願いながら、微笑ましい親子の無言の会話を眺めていた。
そう言えば…二人ともいない…夏樹君と若葉君…小学生の絶対的αだ。
「お義兄さん、お子さん達は?」
こっそりと尋ねると、さも当たり前とでもいうように
「義弘のママ友の所にいるよ。
混み合った大人の話だからって、義弘がごっそりと晩ご飯持参で預かってもらってる。
お互い様だからって、そういう付き合いができるってありがたいよな。
だから、心配しないで。
義弘がさ、子供関係はもちろん近所付き合いとか、親父や俺の仕事関係とか、お袋の趣味の友達とかまで、全部気を配ってやってくれるから助かるんだ。
俺はいい嫁をもらった。本当にそう思ってる。
継君、詩音は大人しそうに見えて、頑固でキツイところもあるけど、絶対に君のフォローはできるはずだ。
気に沿わないこともあると思うが、よろしくお願いします。」
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