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解放⑤

「詩音…もう、意地悪しないから、感じたままに動いて声を出して… お前のかわいい姿を見てたら、我慢ができない…」 くちくちと、後孔を弄る指が、俺の中の部分を探り当てた。 「ひゃぁん!」 何とも間抜けな声が漏れた。 がくがくと身体が震える。 両手で口を塞いだが、その手をやんわりと外されて、ゆっくりと愛撫され始めた。 お腹の奥から甘い痺れが湧き上がり、脳天まで駆け上がってくる。 「あっ…やっ、やだっ…継、そこっ、あんっ」 腰を動かして抜こうとするのに、二本に増やされた指がもたらす快楽に抗えない。 動かせば動かすほどに、指を締め付け、かえって快感の度が上がっていく。 「あっ、あ…や…っ、いやぁ…」 甘過ぎる拒絶の言葉は意味をなさず、抵抗する力も既にない。 脱力した俺の身体を継が抱きしめ、やがて… 「あああっっ」 …前立腺の刺激だけでイってしまった。 「いい子だ、詩音。かわいい…」 やだ…そんなことで褒められたくない。 ぐったりと もたれ掛かる泡まみれの俺の身体を洗い流した継は、軽々と抱き上げて風呂から上がると、頭から爪先まで丁寧に拭き上げ髪を乾かし、口移しで水を飲ませ、横抱きでベッドへ連れて行った。 「詩音…怒ってるのか?」 別に怒ってるわけではない。 指だけで達してしまった自分が恥ずかしいだけだ。 ふいっ と横を向いた俺の顎を持って真正面に戻すと 「お前を愛している。だから気持ちよくしてやりたい。 それは俺にしかできないことだから。 愛撫をしたり、交わったり、それは恥ずかしいことじゃない。 愛し合う者達が行う、ごく当たり前のことだ。 詩音は…嫌なのか?」 悲しげに問われて、胸がきゅうっと詰まった。

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