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解放 2nd⑦

継の頭を撫でて 「…継、もう、これ以上はダメ。 会社に行けなくなる…」 そう言っても、ますますゴリゴリと圧迫してくる。 はあっ…とため息をついて 「言うこと聞いてくれないなら、離れましょうか。」 と、半分脅しにかかると、やんわりと腰を引いてくれた。 「詩音…じゃあ、こっちに向いて。」 不貞腐れた獣の言う通りに、身体を回転させると、真正面からぎゅっと抱きしめられた。 「甘えたさん」 揶揄うように呼び掛けると、もっと強く抱きしめてくる。 「継…苦しいです…ちょっと緩めて…」 無言でゆっくりと力を緩める継。 あぁ…拗ねちゃった。 何がいけなかったの? ベッドから抜け出したこと? 俺の匂いが薄くなったこと? くっ付くのを拒否したから? 甘えたの困ったちゃん。 この猛獣はどうしたらご機嫌を直してくれるんだろうか。 じっと見つめていると、きゅっと眉根を寄せてつぶやいた。 「詩音が足りないんだ」 え…?だって、ずっと側にいるよ? 「継…俺、ずっと一緒にいるじゃないですか。 何が足りないの?」 継は困ったように首を傾げて 「詩音が好きで好きで好き過ぎて…この想いが埋まらない。 俺はどうしたらいいんだろう…」 「継…」 両頬をそっと挟み込んで、優しく唇にキスをする。 「俺はあなたのものです。 『足りない』なんて言わせません。 継、大好きです。愛してますよ。」 突然、継の匂いが濃くなった。 と同時にまた抱きしめられた。 「詩音、詩音…俺の詩音…詩音…」 「継?いい子だから… このままぎゅってして…ね?」 イヤイヤと首を振って、俺の顔をキスの雨を降らせ、喉を舐め上げ、腰を押し付け、エッチに持ち込もうとしている。 やんわりとそれを拒み、継を宥める。 「けーい?」

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