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結婚式前夜③
相変わらずイチャイチャしながら迎えた結婚式前日。
何もかも継にお任せしていたから、心配することは何一つなく、いつもの通り仕事をこなし、篠山さんに
「やっとお式ができますね…本当におめでとうございます。
どうぞ末永くお幸せに…」
と、涙ぐまれて送り出され、家路に着いた。
軽めの夕食を済ませて、引っ付いてきたがる継をかわしながら、明日に備えて早めに就寝することにした。
俺は、これは結婚式当日に言うことかな…とも思ったけど、でも…『これだけは言わなくちゃ』と決めていたことがあったので…ソファーに座る継の前に正座した。
「どうした?詩音…正座なんかして…」
訝しがる継に、深呼吸すると三つ指をつき、言葉を…声を出そうとした。
ところが継は即座にソファーから滑り下りると、俺の唇に人差し指を添え首を横に振った。
そして、俺に向かって正座をして、同じように手をつくと
「麻生田 継の元へ嫁に来てくれて本当にありがとう。
一生大切にするから、俺を信じてついてきてほしい。
詩音…愛してるよ…」
負けちゃいられない、俺が先に言わなくちゃいけなかったのに…と、続けて言葉にする。
「この度無事に、明日、挙式を迎えることとなりました。
世間知らずの不束者ですが、幾久しく添い遂げさせて下さい。
あなたに…あなただけについて行きます。
どうぞよろしくお願い致します。」
深々と頭を下げた。
大きく手を広げた継に抱きつくと、力強い腕で抱きしめられ
「こういうことは、旦那に先に言わせるもんだ。
俺の役目を取るなよ。」
と、鼻先をつつかれた。
「こめんなさい…でも、どうしても言わなくちゃって思って…」
「…詩音は真面目だからな…」
と笑われた。
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