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結婚式前夜④

今夜は手を繋いで眠る。 『今夜は手を繋いで休みましょうね?』と小首を傾げて甘えるように言うと、継は歯軋りをして悶えながらも、了承してくれた。 その代わり…と言って、数えられないくらいのキスをされた。 継にとったら、“それだけ”の行為は『苦行』らしいんだけど。 愛おしい夫の胸に抱かれて指を絡めて、これ以上ないくらい安心して眠りにつく。 明日は、ついに結婚式…どうか無事に終わりますように… すぐに夢の世界へと(いざな)われた俺は、継がこっそりと『処理』しに出て行ったことを全く知らなかった… 翌朝…俺は、隣で眠る夫の腕の中で目覚めた。 何か…重くて身動きができない… …俺の足には、継の足が乗っかって、腰に手が回されて、下半身が完全に密着していた。 継の下半身は相変わらず元気で… 俺は継を起こさないように、そっと絡み付く足を退けようとした。 「俺のかわいい奥さん、おはよう。 何してんだ?」 揶揄うような声音が頭上から降ってきた。 「け、継?おはようございます… あの…重くて…足、退けて下さい…」 「ん?…あぁ、すまない。 これでいいか?」 絡まる足は外れたけれど、必要以上に下半身を擦り付けられ、すっかりその気になっている継をダイレクトに感じる。 「…よくありません。」 ジト目で見上げると、継は口の端を片方だけ上げて笑った。 嫌な予感…回避しなければ。 「継? 今日、俺は綺麗な身体で祭壇に立ちたいんです。 身も心も清らかなままで…」 “わかってね”という思いを込めてそう言うと、むーっと唸っていたが、やがて 「…そうか、そうだな…わかった。 でも、あと十分だけこうやって抱かせて…」 あっさりと諦めてくれてホッとした。 継のお望み通り、きっちり十分間、ぴったりと抱きついて補充し合ってから、俺は食事の支度をするためにベッドを後にした。

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